バカンスへ向けて。モンテッソーリスクールの新たな環境設定という大きな課題

子供のアート作品
もうあっという間に6月も後半になりました。今週の日曜日は、夏至ですね。一年で一番、昼の長い日です。

ミラノにある私たちのバイリンガルモンテッソーリスクールは、ご存知のように… 今年はパンデミックの影響で例年より二週間も早く、学校が終わりました。都市封鎖(ロックダウン)はすでに解除されましたが、学校だけは例外で、閉鎖されたまま学年末になり、これから長いバカンスが始まろうとしています。

私たち教師は、ようやくあと二日で新学期の環境設定を終えます。重い肩の荷が下りて、少しずつ気持ちも緩んできました。今年は思いもよらずこんな形で学期が終わってしまいましたが、皆、無事で健康であることが何よりです。他のことは自然に在るべき場所に収まっていくでしょう。ここ最近のミラノは、毎日のように夕立が降っています。この雨がコロナウイルスもきれいに流してしまえばいいのに!

ここからはバカンスに向けて、気持ちも軽くなると思いきや、9月から始まる新年度の環境設定にまだ追われています。というのも、コロナウイルスによる第二の波をできるだけ防ぐために、通常よりも厳しいルールが政府によって出されるからです。

園庭
間隔を空けて配置された園庭のテーブル

先日のスタッフ会議では、一日の流れを追いながら、社会的距離をどのようにしてとるか?に焦点が当たりました。教具を棚に戻す前に消毒するためのコーナーまたはテーブルを設けたり、ランチも向き合って座れませんから・・・さまざまな工夫が必要です。

小学校に至っては、一クラス10人までになると現時点では予想されます。そこで環境を拡大するためのスペースの確保もしなければいけません。そんなこんなで限られた空間で最大限の様々な発展、展開ができるように、今日は学校をデザインした建築家に来てもらい、皆で話し合いを重ねました。

イタリアの教育科学省、及びに保険省から通達されている数点の課題を配慮しつつ、では、「ここで何ができるのか?」、「可能なのか?」をスタッフ全員で試行錯誤しています。

モンテッソーリのマテリアーレ
美しいグラデーションカラーの色板

そんな目まぐるしい立て直しの真っ最中ですが、私は心地よい音楽をかけてマテリアーレを一つ一つ丁寧に拭き、木製専用のオイルで拭き磨きあげて、棚に閉まっていっています。それはまるでダイヤモンドを磨き上げていく宝石商や職人のようなデリケートで細かく繊細な作業です。色が欠けている部分は、ペンキで塗り直し、修復します。

今朝は、色板の三番目の箱の美しいグラデーションを眺めながら、子どもたちの笑顔が浮かび、時折、ノスタルジアを感じました。そうやってマテリアーレは大切に扱われて、何年も何十年も使われていくのです。受け継がれる伝統っていいですね。

学校は終わり、私のクラスもマテリアーレを棚に閉まって、今、カバーかけを行っています。子どもたちの笑い声や歌声が響いていた空間がシーンと静まり返り、一つ一つの終わりを感じています。次の始まりまで、二ヶ月半の休養が教具にも与えられます。

保護者からの贈り物
保護者からの贈り物

コーヒーブレイクにキッチンに降りていくと、クラスの子どもたちからオフィスにサプライズが届いていました。バカンスに行く前に保護者が届けてくれたようです。「Grazie!」(ありがとう!)と書かれたローズマリーのプランターです。そして、感謝の手紙やカードも添えられていました。どれもとても心温まる贈り物です。

また、どうしても私に届けたいと、シャイな6歳の女の子が先日、鳥のアートの造形作品をパスタで作成して、届けてくれました。とても想像力ある素敵な作品です。

もう一人の女の子は、クラスで皆で歌っていた一週間のポエムを贈ってくれました。「Tuesday’s child comes in joy. Every child is sweet and kind, polite and loving. Everybody is in harmony and peace.」

私のクラスはマザーグースに始まり、俳句、絵本、紙芝居、世界中の歌など様々な多様性をシェアしてきました。

子どもからの贈り物
一週間のポエム。綺麗な筆記体で書かれています。

中でも、ポエムは大人気で、第二か国語(この場合は、英語)であっても毎日繰り返して声を出して読みあげていけば、子どもたちはいつの間にか覚えます。とあるイタリア人のお母さまが子どもが寝言で英語のポエムを言っていて、発音がよかったので驚いたと言われたこともあります。

6歳までの子どもは吸収する精神を持っており、環境にあるものはすべて受肉化して、自分のものにしていきます。3歳までは、無意識ですが、6歳までは意識的に。それだからこそ、環境や関わる大人の語りかけ、意識などが大切なのです。

私たちが向き合う「子どもの家」の子どもたちは、バイリンガルの環境で脳のコネクションを多く作りながらインスピレーションを受けているのだと思います。バイリンガルの子育てについては、長くなるので、私自身の体験を含めて、また別の機会に改めて詳しくお伝えしたいと思います。

薔薇のつぼみ
園庭の小さな薔薇のつぼみ。自然に励まされます。

日本の学校は今年夏休みを短縮したと聞きました。

我が家はこの夏、敢えて毎年恒例であった日本への里帰りをせずに、ミラノの街を離れて、北イタリアの湖水地方で家族でゆっくり過ごす予定です。優先順位は、先ずは休養にしたいと思います。

大自然の中で癒されること。そして、湖でウオーキングしたり、葡萄畑やテニスコート、プールもあるようなので楽しみです。オーガニックワインやオリーブオイル作りにもに挑戦しようと話しています。

コロナ後の世界に適応するために必要だと思うこと。社会の在り方や働き方、暮らしの価値観など、多くのことが変わって行きますが、後ろを振り返り息を詰まらせるのではなく、たくさんの楽しいことやわくわくすることを想像して、自分軸を強めていくこと。未来へ向かってハッピーでいられることを考え、実行すること。どうやってもコロナ前には戻れませんし、一つの終わるべき時代が幕を閉じて、新しい時代が始まっていく。そんな気持ちです。

個人レべルでも、大きなエネルギーのいる大変な軌道修正ですね。でも、悪いことばかりではないはずです。ある意味、コロナ危機が当たり前だと思っていた価値観を変えてくれた。そこから学び、前進していくのみです。この夏は、より多くの「美」に触れて、家族と共に生きる喜びを再び取り戻しながら・・・ここまでに消耗したエネルギーをリチャージできたらと思います。

今年はすべてにおいて、異例の年です。8か月もギャップがあるのですから当然です。9月の新学期に再会できる子どもたちは、どれだけ大きく成長しているのでしょうか。

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