モンテッソーリの生命観。発達の建築的なリズムとは?

お仕事

ミラノより、こんにちは。お元気ですか。

ミラノの新学期は忙しくて、長いバカンス明けですから、日常の暮らしのリズム作りに精一杯でした。その他にも、ありとあらゆる調整があり、ブログの更新にも随分と時間がかかってしまいました。そんなこんなで、あっという間に秋を迎える季節になりました。

ミラノのモンテッソーリ・スクール
新学期を迎えたミラノのモンテッソーリ・スクール

 

イタリアでは、コロナの規制がすべて解けて、マスク着用なし、社会的距離もなし。3年前のような元通りのクラス設定が行われて、新学期が始まりました。

一体、この空白の3年間は何だったのでしょう?

現在の欧州では、戦争によるエネルギー危機やインフラの方が深刻であり、ガス代や電気代は跳ね上がる一方です。

現在、実際にミラノも1015日からの暖房スタートが一週間遅れています。そして、更にエネルギー節約のために政府からの通達があり、家電は一度に一つずつ使うことや、暖房の温度設定もいつもより低くしなければいけません。

ロシアからのエネルギーが遮断されると、北イタリアの寒い冬を乗り越えることができるのだろうか?と不安が過ります。更に追い打ちをかけるように、核戦争の一歩手前というような報道も過熱状態にあり、一体、世界はどうなるのだろう?と心配になります。この戦争のもたらす仮想現実に振りまわされながら、心が下を向いてしまい、精神的に疲弊してしまいます。

ミラノ
人手の多いミラノの街角

それでも一歩、街に出ればお洒落なミラノ。

人々は普通に買い物をして、外食をして、暮らしは前に前に進んでいきます。

何だかパラレルワールドに生きているような不思議な錯覚を覚えるのは、私だけでしょうか。同じ欧州の空の下で、戦争が起こっているということが重くのしかかる一方で、日常は進んでいく。

人類は、いつになったら争いを辞めて過去から学び、鍵穴のような小さな希望を見出せるのでしょうか。

そんな中、私はあることに気が付きました。それは子どもの世界は希望と平和に満ちあふれているということです。子どもたちは、いつも好奇心にあふれて、世界のすべてを新鮮なものと見ています。毎日が新しくて、自分が興味あるものに、全身で向かって行く。そんな子どもたちとの時間は平和そのもので、愛があるのです。

マリア・モンテッソーリも二つの戦争を生き抜き、「平和は子どもから始まる」という答えに辿り着きました。モンテッソーリは人間の発達を四段階に分けて、生命の建設的なリズムと表しました。「全ての生命には与えられた時があり、特に幼少期においては人格形成の礎が築かれる最も大切な時期である」と。

球根という名のグラフ

図出典:筆者のモンテッソーリ教師育成コースのアルバムより(個人所有物)

この時期に敏感期などが集中して起こり、人が人として育っていくのです。この発達の四段階は、多感な赤い線で色分けされた時期と青い、比較的、穏やかな時期に分けられています。一般に大学が一番大事だと社会では思われますが、モンテッソーリは亡くなる前に発表した球根という名のグラフで幼児期こそが一番大切であることを証明しています。

そして、興味深いなと思うのは、このグラフの右側にXという文字があります。これは数学などの工程式に出てくる『X』です。モンテッソーリは、人間というものは『X』のような存在、すなわち神秘に満ちあふれてあり、未知であると位置付けているのです。

子どもの成長によって、その月齢に合ったサイズの自立を促し、環境を丁寧に整えていくのがモンテッソーリ教育の特徴です。私が出会ったローマの愛弟子のチェーリ女史は、このそれぞれの段階をこのように教えてくださいました。

0歳から6歳まで【自分でできるように手伝ってください!】

0−6歳
玄関の葉っぱを磨く息子。日常生活のお仕事。

 

この時期の子どもをモンテッソーリは、吸収する精神を持っており、Spititual Embryo (精神的、または霊的胎児)と呼びました。

まさに人格の礎が築かれる大切な時期です。環境の中で自由に能動的に動き、『自分でできた!』という体験をたくさん積み重ねることによって、自分自身を創っていきます。それは大人が意識することから始まります。

 

 

6歳から12歳まで【自分で考えられるように手伝ってください!】

ギリシャ文明の小冊子
6-12 息子はギリシャ文明の小冊子を作成しました。

 

小学校過程は、学びの基礎です。

この時期に『世界でたった一人の私』が築かれます。自分で考えて、解決を見出して、独自のアイデアを持つ。

6歳までは、触れることによって感覚的にそのもののアイデアを頭で形成しましたが、今度は抽象的なイマジネーションを感性で育て、心では道徳観念が芽生えます。

ここで仲間とのリサーチもよくするので、特別な絆のような連帯感が生まれて、競争ではなく、共存、そして、分かち合う喜びを学びます。

 

 

12歳から18歳まで【あなたと一緒にできるように手伝ってください!】

12-18 イギリスのブライトンにあるモンテッソーリ中学校の農園
12-18 イギリスのブライトンにあるモンテッソーリ中学校の農園

 

多感な思春期には、ERDKINDER(大地の子プロジェクト)が提案されます。

ここでいうあなたとは、友であり、師であり、家庭、社会、環境、社会、と大きな輪への拡がりを意味します。

大地に触れながら、食を慈しみ、地球の生命体を一緒に考えて、手を差し出せる人を育てましょう、とモンテッソーリは言っています。そのためには前段階の自分で考えられるということが大前提です。

 

 

 

18歳から24歳まで【あなたのために出来るように手伝ってください!】

コスミック教育
コスミック教育。すべてのものは、相互に依存して、存在している。

 

この時期には、自らの能力や情熱を使って、エゴではなく、自分ではない誰かのために出来るような人に育っている、というのがモンテッソーリの考えた新しい人間像のビジョンでした。

この誰かは、家族、友人、環境、社会、宇宙かもしれません。もしくは、目の前で困っている誰か・・・このような知性と慈しみの心ある人類の未来像が明確に描かれています。

図出典:リディア・チェリ先生から筆者が個人的に頂いたもの

 

 

最後に・・・

私は、モンテッソーリ教育を通じてイタリアの愛弟子たちに出会ってきました。

彼女たちからメソッドの神髄に触れることの本当の意味と、その揺るがない普遍的な価値を学びました。起き上がりこぶしのように、起きては転ぶ。立ち止まるときもあったっていい。大切なのは続けること。伝えていくこと。

平和は教育によって作られるものです。そのために自分にできることをしよう、と。私は小さな世界に守られていることに感謝をしながら、秋の夜長に一刻も早い停戦を祈るような気持ちです。

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