マリア・モンテッソーリ生誕150周年で湧くイタリア
イタリアより、こんにちは。皆さまいかがお過ごしですか。
今日、8月31日はマリア・モンテッソーリ博士の生誕150周年のお祝いの日です。出生地のキアラヴァッレでは、盛大なイベントが数多く企画されています。そのすべてに参加したい気持ちが山々なのですが、新学期を前に遠出はできないので、バーチャルで私も心を重ねています。
こちら北イタリアでは、ミラノのお隣の町、ブレーシアでモンテッソーリ博士の名が付けられた広場、Piazza Maria Montessori(マリア・モンテッソーリ広場)が今日、誕生します。地図にも載って、これから次世代へ、そのまた次世代へ、皆に愛される広場となるのでしょう。更に秋には、イタリア銀行により正式にモンテッソーリの通貨、2ユーロコインも流通が始まります。リラの時代の紙幣が記憶に新しいところですが、今回はコインになります。
このような150年という長い年月を経て、代々伝えられてきたモンテッソーリメソッド。初期のマテリアーレ(教具)に私はその原点を感じます。絹の糸で一つ一つ丁寧にまかれていたグラデーションの美しい色板。イタリアにはまだその伝統が残っており、愛弟子と呼ばれる最後の世代のモンテッソーリアンが今もなお数名残っていらっしゃいます。そのようなイタリアならではの空気感や雰囲気の中で、この教育に携われることを喜ばしく思います。
今、「モンテッソーリアーナ」という博士の生涯をオペラにした音楽を聴きながら書いています。そうすると自然に歴史が刻んできた足跡を感じるのです。
戦時中、女史はムッソーリーニの独裁政権と決別した後も、決して妥協せず、諦めなかった強さや勇気を持っていました。亡命という形で一度は、命からがら祖国イタリアを去る運命にもありました。激しく揺れ動く時代に翻弄されながらも、自分の信じた道を貫き、常に時代の一歩前を歩いた女性。世界に希望を与え、その希望の光を私たちは受け継いでいるのだと思います。
昔も今も変わらずに、彼女の哲学に深く共鳴して、支え、助け合う人々が連なり、世界中で常に進化を続けるモンテッソーリメソッド。人間の自立や自律を深く考えたこの教育法を確立するために女史が歩んだ道のりに尊敬を覚えます。
さて、いよいよ明日から9月ですね。こちらは長い夏の休暇も終わりが見えてきました。新学期がもうすぐそこに訪れています。今年は、すべての意味でパンデミックの影響が大きくて、バカンスがバカンスでないような・・・不思議な感じの夏でした。日本に里帰りもせずに、北イタリアの湖水地方で過ごしたことは前回のブログでお伝えしました。
今週に入り、イタリア国内のコロナウイルスの新規感染者が再び増えていく現実が目の前にあり、緊張感を感じるのは私だけではないようです。国内では、近々教員のストライキが予想されており、新学期を前に政府のコロナ対策が十分でないと訴える教員たちが、新学期初日から大きなストライキを行うそうです。
カレンダー上では、イタリアの学校は、9月14日に始まります。新学期に備えて、各州では教員の新型コロナウィルスの抗体検査も始まりました。こちらミラノのあるロンバルディア州でも同じです。先日、学校にスタッフの検査を促すお便りが届きました。というわけで早速、私も予約を入れました。結果は48時間以内に分かるということで、どうなるのでしょうか。ドキドキしています。
しかし、抗体検査は言うまでもなく、コロナウイルスに対する抗体があるかを見るものです。ですから、明日以降新たに感染しない保証はどこにもありません。となると、個人的にはどこまで意味があるのか、いささか疑問ですが・・・でも、受けてみないと分からない、というのが現実です。ロンバルディア州では、学校関係者は無料で検査を受けられる仕組みになっています。
そして、9月からの新しいアカデミックイヤーに向けて少しずつ気持ちを準備しています。写真は私のウィークリーカレンダーです。手帳も新調しました。大まかな予定や一週間の目標、大事な課題、成すべきことはここに書いて、一週間の流れを把握するために欠かせません。まだ仕事が始まっていないので中身は白紙ですが、初めは保護者面談なども多いので、直ぐに予定が埋まります。ちなみに今年は対面ではなく、すべてオンライン上になると思います。
学校では、社会的距離を確保するためにクラスの人数を半分にしました。ウイルス対策のための空調設備の大がかりな工事も進行中です。先ずは一日の流れであるルーティーンを見直し、検証することからです。教具の消毒も大きな課題です。この準備に一週間ほどかけます。受け入れ態勢と環境を整えて、子どもたちを笑顔で迎え入れたいと思います。
余談ですが、この夏は、家の整理もしました。俗にいう断捨離です。今いるもの、いらないもの。それらを仕分けして、古いものは処分し、これから必要なものだけを明確に整理整頓しました。環境を整えると気持ちもすっきりします。我が家は夫も整理整頓が好きなので、息子も総動員して、大掃除。観葉植物も増やして、家でも家族が気持ちよく、くつろいで過ごせる空間を作ることができました。
目を通したモンテッソーリ関係の新聞や雑誌の切り抜きも、きれいなピンク色のフォルダーに納めました。再度ロックダウンにならないことを願いますが、万が一、そうなったとしても家に小さなマイオフィスを作ったので、オンラインでのレッスンも準備万端です。何事も体験だなと思います。
最近では、MIND Magazine(心理学や脳科学の専門誌)でモンテッソーリ教育の特集がありました。ここのところイタリアでは、マリア・モンテッソーリ生誕150周年を祝うための記事を至る所で見かけます。「祖国が誇る教育者」という博士の存在を改めて感じます。かくいう私自身も前回のブログでもご紹介した新本を読んでいる最中です。
何でもそうですが、原文で読むと、すとんと心に落ちてくるものがあります。言葉の一つ一つが深く心に染みるのです。マリア・モンテッソーリ博士が選んだ言葉の一つ一つに彼女の魂の息吹きを感じます。他にも原文では表現方法、微妙なニュアンス、そして、その土台であるイタリア文化の精神的背景を感じることによって、本質のエッセンスがすーっと入ってくるのです。いつかそのような要素も踏まえて、私なりに日本語に翻訳できたらなと密かに思っています。
そして、お知らせもあります!
この秋は、もっとモンテッソーリ教育について知りたいという方を対象に、モンテッソーリ教育のオンラインセミナーを開催します。ロックダウンの封鎖時に親ごさんたちへの援助の大切さを痛感しました。何かできないかしら?と模索していた矢先に、以前イタリア研修でお世話になった東京のエージェントの方がお声をかけてくださり、タイムリーにこのような企画を実施する運びとなりました。
こういう時だからこそ、すべきこと、できることや新たな可能性があるものです。オンラインセミナーでは、イタリア発祥のモンテッソーリ教育を母親と教師の視点から、皆さまにやさしくお伝えできたらと思います。これからプロジェクトを進めて行くところです。詳しい日程などが決まり次第、このブログでもご紹介させて頂きますので、どうぞお楽しみに!
今、自分に与えられた場所で最善を尽くすこと、小さな積み重ねが大切!そうすれば必ず道は開けると思います。今、世界中がコロナで不安定な状況ですが・・・逆にこんな時だからこそ、私は人生の優先順位を定めました。残り少ないバカンスの日々を味わうと同時に毎朝、家を磨きあげて、美味しいものを作り、心地よい音楽を聴いて、今この瞬間に家族が健康であることを感謝しています。皆さまもどうかお元気でお過ごしください。