コロナ禍のミラノと今年のクリスマス
ミラノより、こんにちは。今年もあっという間に師走ですね。北イタリアは、寒さも一段と増して、先日は、なんと初雪となりました。ミラノの朝晩は零下となり、かなり冷え込みます。日本も同じでしょうか。
いよいよクリスマスのアドヴェントも二週目となり、街中にも飾りが目立つようになってきました。今年の冬休みは、新たな法令で州の間の移動が禁止されており、高齢者との接触は身内でも極力避けなければいけません。
イタリアのクリスマスは、日本のそれとはかなり意味合いが違い、文化的にも…、宗教的にも…、センチメンタルな意味でも…、イタリア人にとっては一大イベントです。しかし、今年は誰もがどこかで制限を受け入れる、「異例のクリスマス」となります。
学校でもデコレーションやアドヴェント・カレンダーをめくる日々です。子どもたちも(6歳以下はマスクさえつけていないのに!)誰一人、感染せずに、一学期を終えるラストスパートまで辿りつけました。これはもう奇跡のようです。守られたことに感謝しかありません。
雪の日。
午後に切り紙でツリーやハートや雪の結晶を作って、窓ガラスに飾り、子どもたちと一緒にじっと雪を眺めました。雪を眺めるのは、とても神聖な気持ちにしてくれます。自然の現象をそのままの姿で観察することは、子どもたち一人一人の中に、何かしらの感情を産み出します。
この時期、お迎えの時間には、クリスマスの絵本を広げています。お手製のクラスのアドヴェント・カレンダーには、コマンドカードが英語とイタリア語で順番に毎日入っており、一日に一つずつ嬉しかったこと、好きなもの、クリスマスに願うこと、などテーマを話しあっています。
例えば、一日目のコマンドは、「お友達にハグしよう。」二日目は、「クリスマスの嬉しいことは?」など、子どもたちの書く内容から、それぞれの家庭の様子が伝わってきます。こういう時間は温かいものです。
子どもの家では、クリスマスのお仕事を中に入れて、それぞれ家庭に持ち帰るための切り紙のバッグを用意しました。最高の贈り物ですね!
プレゼントというのは、目に見えるものと、目に見えないものがありますが、子どもたちが自ら成し遂げた数々のお仕事というものは、そこに費やした彼らの時間や集中力や、愛情がこもっていて、彼らにとってかけがえのない宝物です。
なぜかというと、同じお仕事でも、子ども一人ひとりによって、仕上がりが異なり、世界でたった一つの「私のお仕事」だからです。
私たち家族も、今年は夫の実家のあるローマへは行かずに、ミラノで家族3人でクリスマスを過ごします。
いつもと違って人込みを避け、遠出も出来ず、親戚にも会うことさえもできません。でも、こればかりは受け入れるしかなく、しょうがありません。
それならば!と気持ちを切り替えて、家でテーブルを飾り、きちんと正装して、ささやかながらも手料理のご馳走に腕を振るいたいと思います。
厳格なムードのイタリアのクリスマス。それは、静かなものです。家族が在るからこそ、共に過ごす喜びがあり、価値がある。パンデミックが教えてくれたことも計り知れず、本当に大事なものや大切にすべきことを改めて、考えさせられた年でした。
社会のシステムの脆さもさることながら、個人の弱さを知り、それでも生きていく強さやたおやかさが与えられた気がします。「ブレない自分軸を持ち、本質を見極めていくこと。」見知らぬ新しい現実を航海していく上で、最大のテーマはそれだと実感しています。
また第二波の中でもずっと学校は開かれていました。改めて、教育者というのはエッセンシャルワーカーなのだと実感しています。
相手の必要としているものを感じ取り、絶妙なタイミングで惜しみなく差し出していける手で在ること。それこそが教育者です。最近は、子どもに関する悲しい事件などを耳にするたびに、とても心が傷つきます。だから、この仕事を幅広く続けていく意味があるのだと強く感じています。
ロックダウンからロックダウンへ、綱渡りのような心細い心境で歩んできた一年でした。でも、だからこそ、開かれた新しい扉もありました。秋のオンラインを通じてのセミナーでは、一瞬で世界中の皆様と繋がることができました。私自身も日々、学び続けています。
【置かれた場所で花開く】という好きな言葉があります。
私個人の場合は、本場イタリアでモンテッソーリ教育の神髄に入り込み、この地で信頼とコネクションを築き上げ、世界とイタリアの架け橋になる使命を与えられているようにさえ感じています。
そして、私が出会ってきたモンテッソーリ女史の愛弟子と呼ばれる恩師たちの、宝石が散りばめられたような言葉や智慧や体験を伝えていく使命があります。
こういう時だからこそ、力強く幸福に向かっていく精神力が磨かれていくのかもしれません。しなやかな感性で自分らしさを大切にしながら、自分自身はもちろん、周りや他者に対する配慮や思いやりも忘れずにしたいものです。
私はモンテッソーリアンとして、今後も自分にできることを最大限成し遂げ、360度の広い視野で世界を眺め、この仕事を通じて、深い愛情を発揮していけたらと思います。皆さまも心の温まるアモーレあふれる素敵なクリスマスをお過ごしください。
✨✨お知らせ✨✨
サンパウロ書店の月刊紙、「家庭の友」2021年1月号より、「ミラノから見たモンテッソーリ教育」という連載を1年間に渡って執筆させていただく運びとなりました。
以下のリンクよりご購入いただけます。年間講読に関しては、発行元サンパウロ書店へ直接お問い合わせください。キリスト教関係の専門書となりますので、アマゾンや一般の書店では販売されていないようです。
雑誌の詳細 https://sanpaolo.themedia.jp/posts/categories/3894415/page/1?type=grid
オンラインショップ PAULUS SHOP https://www.paulus.jp/product/18988